禁煙ではなく禁煙のお願いです。~郡山市の敷地内禁煙について

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この問題への取り組みの切っ掛けとなったのは、11月25日の郡山市長の定例記者会見でした。市長がどのような発信をしているのか、いつもYouTubeで見ているのですが、この日は記者さんたちの質問が12月1日より始まる郡山市の敷地内禁煙に集まりました。「室内も屋外も例外無くやるのか」「ビール祭りなどのイベントはどうするのか」「条例は作らないのか」等など。それに対する市長の回答は、「道路以外の市の施設は全て禁煙」「条例制定はしない」「喫煙者は禁煙外来へ行け」「(ビール祭りも)例外無く禁煙」ということで、あまりにも強引な印象を受けました。

特に、私は「条例制定はしない」というところが気になりました。別に何でもかんでも条例で縛らなければならないという話ではないのですが、最近の話題となっている東京都の場合も、先進的に取り組んだ神奈川県の場合も条例を制定していたり制定しようとしていたりです。また、どちらも室内の話だったので、条例無しで屋外までやれるのか疑問に思ったわけです。

市長が記者会見の中でも根拠法として示していた健康増進法をまず見てみました。健康増進法は25条で、受動喫煙防止に対する取り組みを規定しています。

条文は、「学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう。)を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない。」となっていますが、ここで注目なのは、受動喫煙の定義、「室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう。」です。つまり、法律が求めている受動喫煙防止対策は、室内の話なのです。これは、職場の受動喫煙防止対策を規定する労働安全衛生法でも同じです。

次に、「郡山市の公共施設における受動喫煙防止対策指針 」を見てみると、目的として、「 本指針は、健康増進法(平成14年法律第103号)第25条及び労働安全衛生法(昭 和47年法律第57号)第68条の2に基づき、郡山市の公共施設における受動喫煙防止 対策について定め、受動喫煙による健康への悪影響を排除し、もって、市民を始めとする 利用者及び公共施設で勤務する職員(以下、「市民等」という。)の健康の保持増進を図り、また、快適で良好な施設環境の形成を促進することを目的とする。」と定め、受動喫煙については、健康増進法や労働安全衛生法と同じで「室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされること。」と定義しています。

しかし、自分自身で、受動喫煙の範囲を「室内又はそれに準ずる環境」と定義しているにもかかわらず、屋外での喫煙と受動喫煙の関係も示さずに、その具体的な受動喫煙防止対策としていきなり「市の公共施設(指定管理者制度を導入している施設を含む。)は、受動喫煙防止のた め、敷地内禁煙とする」敷地内禁煙とは、「公共施設の建物内及び敷地内を含めたすべての場所における喫煙を禁止すること」として、室内だけでなく屋外もすべて禁煙にしているのです。

ちなみに、WHOが日本に対して東京オリンピック・パラリンピック開催までに完全禁煙を実施することを求めていますが、これもあくまで「室内」の話です。

ついでと言っては何ですが、喫煙する権利についても調べてみました。

何件かの割と最近の受動喫煙損害賠償請求事件の判例を見ると、「煙草は生活必需品とまでは断じがたく、ある程度普及率の高い嗜好品にすぎず、喫煙の禁止は、煙草の愛好者に対しては相当の精神的苦痛を感ぜしめるとしても、それが人体に直接障害を与えるものではないのであり、かかる観点よりすれば、喫煙の自由は、憲法一三条の保障する基本的人権の一に含まれるとしても、あらゆる時、所において保障されなければならないものではない」、喫煙の「制限が必要かつ合理的なものであるかどうかは、制限の必要性の程度と制限される基本的人権の内容、これに加えられる具体的制限の態様との較量のうえに立つて決せられるべきものというべきである」としており、たばこを吸う権利は基本的人権に含まれるものであること、合理的な理由があれば制限できることなどが解ります。

そう、たばこを吸う権利は、基本的人権の一部であり、合理的な理由がないと制限できないのです。郡山市は、屋外を禁煙にする合理的な理由を示さなければなりません。

この部分について、議会の同僚議員の一般質問に対する関連質問で登壇し、「屋外を禁煙に出来る法的根拠」をお聞きしたことに対する答弁やその後の部長さんとのお話で、郡山市は、健康増進法を根拠として敷地内禁煙を実施していること、郡山市の公共施設は全て「室内又はこれに準ずる環境」に含まれると考えていること、条例無しで実施できるのは「施設の管理権」に基づくものであることなどが解りました。

ですが、皆さん、例えば東部森林公園や布引高原が「室内又はそれに準ずる」環境でしょうか。また、管理権で何でもできるのであれば、「庁舎管理規則」や「都市公園条例」でわざわざ禁止事項を定めている意味はあるのでしょうか。その点を、疑問点として後日開催された総務財政常任委員会で総務部に対する所管事務調査で確認してみました。すると、条例や規則で規定しているものは強制的に禁止されるが、管理権で行っている禁煙は「協力をお願いしているだけで強制はしていない」ものだとの答弁でした。

禁煙ではなく、禁煙のお願いだったのです。

ただ、この答弁は、先に述べた「郡山市の公共施設における受動喫煙防止対策指針 」の「公共施設の建物内及び敷地内を含めたすべての場所における喫煙を禁止すること」という方針を「~禁止をお願いすること」に変えたことになります。禁止では吸えませんが、禁止のお願いなら、お願いを聞くかどうかは吸う人の判断です。「禁止」と「禁止のお願い」では、全く違います。

今回は、主に法律的な側面からの話でしたが、その他に、実効性の問題と郡山市におけるたばこ産業の歴史的な背景、税収としてのたばこ税の重要性などの論点が存在します。

ここでは簡単に触れますが、実効性の問題としては敷地内禁煙としても敷地の外で吸っているだけだということです。一か所に集められ密閉された喫煙室で吸っていた方々が、敷地の外で銘々に吸っています。これでは受動喫煙を防止するのではなく受動喫煙をバラまいている状態です。

また、郡山市には、葉たばこ産地としての歴史があります。JTの工場が雇用も生んできました。現在でも葉たばこの出荷額は年間1億7,000万円にのぼり、郡山市全体の農業出荷額170億円弱(内、お米が100億円程)の中でも単独の農作物としては大きい部類でしょう。葉たばこの生産に関わる方や販売に関わる皆様への説明が「決まったのですみません」だけでは全く足りませんし、これらの皆さんの意見も聞くべきです。
今回の敷地内禁煙はJTの郡山工場撤退との関連は無いのでしょうか。と、勘繰りたくなってしまいます。

説明不足は市民に対しても同じで、市はネットモニターに対するアンケート結果から市民の理解を得られたとしていますが、334,572人(12/1現在)の人口に対して、ネットモニター295名(内女性158名、男性137名)のアンケートで敷地内禁煙について賛成82.3%、反対9.2%の結果が得られているとしてもそれが市民全体の理解なのでしょうか。このアンケート内容を見ていくと、17問の質問の中で殆どは受動喫煙や喫煙についての認識や状況について聞いています。後半になっていきなり他の対策方法は示さずに、敷地内禁煙に対して賛成か反対かを聞いています。このタイミングと流れでは、例えば別の方法「分煙をもっとしっかり進める」についての賛否を聞いても、たぶん同じ結果になったのではないでしょうか。最後の設問で自由意見を求めていますが、その中では喫煙者に理解を示す意見や分煙を求める意見、まさか室内も室外も全部禁煙だとは理解していないと思われるような意見もありました。これらの意見をどう生かしたのでしょうか。敷地内禁煙ありきだったのではないでしょうか。因みに、回答者の中で喫煙者の割合は8.1%でした。日本の喫煙率は19.3%で、女性7.9%、男性30.1%ですが、ネットモニターは先に述べた通り女性が過半数を占めています。ネットアンケートということで比較的に喫煙率の高い高齢の方の割合も低かったのではないでしょうか。また、施設の使用団体の意見は全く反映されていません。

東京都では、公共施設や飲食店の「屋内」を禁煙にする条例のパブリックコメントを実施しましたが、「意見を寄せたのは5,085人で、意見総数は1万6,972件。賛成意見6,464件(全体の38%)、反対意見(一部反対を含む)8,192件(48%)、賛否の不明確なものが2,316件(14%)」だったそうです。郡山市も、パブリックコメントぐらいするべきでした。

税収については数字なので簡単です。郡山市のたばこ税収入は年間で32億円、会計の単年度黒字額は毎年20億円程、たばこ税が無ければ赤字です。たばこ税を収入として得て使っている郡山市は、たばこを吸う皆さんに最低限の敬意を表すべきです。

「禁煙ではなく、禁煙のお願い」だとしても、郡山市の貼っているポスター(上の写真)や広報こおりやまから受取る印象は禁煙を強いるものです。逆に、広いイベントなども行われる公園でも小さなポスターが数枚貼ってあるだけと、そのやる気が疑われる面もあります。この行政のスタンスも含め今回上げた論点を整理して、効果的な受動喫煙防止対策を実現したいと考えております。

最後に、マナーやルールを守り、吸う人も吸わない人も互いの立場を理解できる郡山市を実現していく覚悟と長文にお付き合いいただいた感謝を申し上げて、この文章を締めたいと思います。

あ、私はたばこを吸いませんので。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする